「おじいさまは、28歳」
文責:JCA会長 鈴木理恵 / 訪問日:2022年8月1日
「チンチラ、飼いはじめました!」(誠文堂新光社)を執筆した際に、ご長寿チンチラさんのコーナー「神々しいご長寿たち」(106-107頁)でたくさんの20歳超えのチンチラさんを取材させていただきました。
その際に最長齢だったチンチラさん「シナモンさんは元気にしているかな」とふと頭をよぎった時に、こんな情報が舞い込みました。
”28歳のチンチラさんがいるらしい!”
「すごーい!一体どこのどなた?」と聞いてみると、なんとシナモンさんではありませんか!
そのとき「ああ、これは運命だわ。会いにいかないと!」という気持ちがわきあがりました。
すぐに協会として取材を申し込ませていただき、九州大分へひとっとび。
しかし、それは真夏の出来事。九州はとても暑い。
今年の夏は異常気象注意報が出る暑さでしたから、
冷房のきいた車内でも熱中症になりそうでした。
「こんな暑い九州地方で、ご長寿ってどういうことかしら。」
という思いを抱えながら、いざシナモンさんの元へ。
ペットショップの看板チンチラ ー シナモンさん
実は、シナモンさんは、大分にある老舗ペットショップの看板チンチラさん。
約28年前に遠くカナダからやってきてからずっと「わだペット牧場」というペットショップ内で暮らしています。
◎シナモンさんの暮らし方
2020年2月に生涯のパートナーのシロおばあさま(享年25歳)を亡くしてからは、一人でのんびりマイペースに生活しているそうです。
◎シナモンさんの家族
シロさんとは子供に恵まれ、たくさんの子供たちがお客様の元へ。
ご長寿な家系だったのでしょうか。
お店の看板チンチラさんだった息子さんも、20歳まで活躍されました。
◎高齢になってからの過ごし方
シナモンさんは、高齢になってから回し車をはずしたこと以外は、ケージ内レイアウトもほとんど生涯変わることなく、同じ牧草、同じフードを食べ、接客のごほうびやコミュニケーションツールとして毎日数個のおやつをもらうという生活でした。
ここ数年は、砂浴びの回転ができなくなってしまい、お風呂は砂をささっとかいて終えてしまうので、オーナーやスタッフさんが砂を体にかけてまぶしているそうです。
現在は、足腰もだいぶ弱くなり白内障も進んでしまったことでふらつくことも多くなりましたが、意識はしっかりしているとのこと。
数年前に、いつのまにか手を怪我してしまい、そのまま曲がってしまったため、あまり手は器用ではなくなってしまったのですが、そんなことはもろともせずにいまある機能を上手に使って不自由を感じさせることなく過ごしています。
シナモンさんを手ぐしでグルーミング
そして、今回、ありがたいことに、シナモンさんを抱かせていただきました!
簡単ではありますが、現在お体に不要な浮いた毛をササっと回収。
体はとても軽かったのですが、なんというか芯の強さと魂の重さを感じました。
ずっと抱いていたかったです。
28年の年輪は、まさにamazing。
シナモンさん、本当にありがとう。
シナモンさんを訪問して感じたこと
東京への帰路でシナモンさんの環境を思い返して私が感じたことは、
店内の湿度が非常に低かったこと。
アクアや鳥さんたちもいましたが、とてもカラッとしていました。
そしてなにより、ゆっくりとした時間。
変わらない家族。
変わらない食事。
変わらない温度。
変わらない湿度
トータルして、変わらない環境。
28年間、生活のほとんどに大きな変化がなく、本当にマイペースに生きてこられたんだろうなという印象でした。
ペットショップと言えども、小さなおうちのような建物で、お客様もなじみの方が多く、アットホームな店内です。
たくさんのさまざまな動物たちが住んでいますが、みなとてもおだやかで騒いでいる動物はほとんどいませんでした。
変化に不安を覚える小さな動物たちにとって、「変わらない」生活がどれほど「ストレスフリー」であるかを改めて実感させられたシナモンさんとの魂の対話でした。
現在ギネスブックで記録されている世界のチンチラの最高齢は、29歳229日です。
ただし、ギネスに挑戦するには、なんらかの形で出生を証明できる書類等を提出しなければなりません。
残念なことに、シナモンさんには出生を証明するデータが全く残っていないそうです。
それでも、取材内容から、一般社団法人 日本チンチラ協会では、シナモンさんを現在(2022年10月現在)の日本最高齢チンチラとして、記録させていただきたいと思っています。
日本の全チンチラたちの希望の星・シナモンさん。
どうか1日1日を心穏やかにお過ごしください。
来年も、いや、数ヶ月後にでも、また会いに行きたいと思います。